まい。この事件が××××であった点は、別に、某重役のブルジョア的利害と醜関係があったからではなく、実は、この計画が例のオーソドックス・ファッショのもので××××という、一般的な××にあったに外ならないのである。オーソドックスにぞくしていないから、松屋の重役の懐具合を×××にしなければならなかったまでで、丁度、オーソドックスでなかったればこそ、武器をわざわざ民間の銃砲店から××して来なければならなかったのと、全く同じ現象だったのである。
 神兵隊事件の「××××性」が暴露されたのは、何も今になって改めて暴露されたのではない。それが初めから××××であったればこそ、その××××が暴露される運命に立ち到ったのである。という意味は、初めからオーソドックスのファッショ事件ではないらしいと、当局からにらまれたのが×××××きなので、そこから「黒幕」の追究が始まり、資金関係が手繰られ遂々重役との醜関係が明るみに出たというわけで、苟もオーソドックスのものであったなら、「黒幕」の追究など行われる心配はないから、従って何等か××××××××が暴露されるという心配も無用だった筈である。尤も、「満州事変の際には目黒区に居住の有力な某政治浪人(特に名を秘す)の早耳により約十万円を儲けて同人に献金した事実があり」と読売新聞(九月二十八日付)が書いているのは多分無根の事実だろうが。
 一味が「某々方面」や五・一五事件に関係ある海軍士官に、参加を勧誘して断わられたという証拠が、某弁護士の手許から出たそうだが、こういう風にオーソドックスから×××されたことが、取りも直さず運命の神から見放されたことを意味するので、夫があたら神聖な「神兵隊」の名を×××根本原因になっている。取り調べ中の或る人物は、検事に向って「五・一五事件で神武会長大川周明が検挙された時には大川の資金関係を大して追究せず、何故今回ばかり資金関係を追究するのか」と云って「追究」しているが(東朝十月一日)、この××は、この事件のオーソドックス的権威の××××××思い上りからだと云わねばならぬ。

   二、国際文化局

 外務省は「国際文化局」を新設する案を立て之を来年度の予算に計上するそうである。経費は初年度一七〇万円で、局長一名、課長三名、事務官七名、理事官二名、嘱託十二名、属其他十八名という、堂々たる構えであり、その外に、海外の主な国々に文化使節を駐※[#「答+りっとう」、第4水準2−3−29]せしめ、更に外務省監督の下に、朝野の財力と知力とを総動員して有力な国際文化事業を目的とする財団法人「日本文化中央協会」と云ったようなものを、民間に造るそうである。云うまでもなく「対外文化宣揚[#「対外文化宣揚」に傍点]」がその目的なのである。
 そこで、さし当り着手する事業は、一、日本文化講座を主要諸外国の大学その他に新設すること、二、海外各地に日本語の学部又は語学校を建てること、三、学者、芸術家の海外派遣、四、教授及び学生の交換、五、国内国外の国際文化団体の補助、六、本邦芸術(歌舞伎・能・国産映画等)及び本邦国技の紹介、等々だということである。
 誠に結構なことで、今までこうした施設に気づかなかったことが寧ろ変だったと云いたい位いである。自分の国の文化を世界に示すことは、当り前な国際関係で、その結果はまたおのずから外国の文化の輸入という現象ともなって現われるから、ここに本当の「国家」(?)の使命たる世界の文化的共同体への道が開けるわけで、もし、之を放っておいて「外交」とかいうものをやっていたのだとすると、今まで国家は対外的に変なことばかりをやって来たことになる。で何しろ早くこの点に気づいて良かったと思う。一七〇万円や二〇〇万円の金は少しも惜む処ではない、フランスは七六〇万円、ドイツは八六〇万円、イタリアは八三〇万円、スペインは二〇〇万円、夫々この種類の対外文化事業に投じている。観光局[#「観光局」に傍点]のような変態的な紹介機関しか持たなかったわが国が一体いけなかったのである。
 だが疑問はいくつも出て来てつきないのだ。対外文化宣揚が目的だそうだと云ったが一体なぜ急に、わが国ではそれ程文化の対外的宣揚が必要になったのか。日本の文化は決してこの数年来、その水準が高まって来てはいない。高まった部分があるとすれば、夫はソヴィエト・ロシアやドイツを通じての社会科学的研究や常識の場面其他一般の自然科学的研究の世界に於てであって、日本固有な文化(もしそういう言葉が必要ならば)の場面に於てではない。まさか「日本社会主義」とか国体科学とか其他其他のものの建設が日本文化の昂揚でもあるまい。歌舞伎や能はキネマや世界音楽に較べれば、相対的に急速に衰退しつつあるし、相撲が再び盛んになって来たと云っても、拳闘や野球に比較したら
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