た小学校建物には、単に古いとか位置や其他が不適当だったというばかりではなく、可なりの不正請負の結果によるものもあるらしい。こうなると技術の社会的運用の問題になるわけで、特許権数がいくら世界の第三位になっても、技術の社会的[#「社会的」に傍点]水準は一向向上しないということが之でも判るだろう。
[#地から1字上げ](一九三四・一一)
[#改段]


 高等警察及び冷害対策

   一、高等警察性

 東京朝日新聞が報じる処によると(十一月二日付)、内務省の唐沢警保局長は、就任以来、警察行政刷新の理想を持っていた処、最近警保局の局課長会議に於てこの刷新の根本方針に就いて協議を重ねた結果、遂に高等警察[#「高等警察」に傍点]の廃止を決定したそうである。高等課の受け持ちである、政治、経済、宗教方面に就いて、今後は単に犯罪を構成するような問題に限って活動を続けることにし、而もその活動を特高課と刑事課とに管掌させようというのである。
 之は一方に於て警察事務を単純化し簡易迅速にする所以であり、他方に於て権力行使の範囲を限定して警察本然の機能を強力化する所以になるということだ。即ち従来に較べて高等警察事務はズット消極的になるわけであるが、そうすることの方が警察事務が簡易迅速になって且つ警察本然の機能に適うというわけである。之で見ると従来の所謂高等課の積極的な活動は大体に於て、警察行政上無用で××であったということが、警保当局自身によって認められたわけだ。今後は犯罪を構成するような問題に限って取り上げようと云うのだから、従来は、政治、経済、宗教方面に就いてはまるで××と関係のないことに高等課の刑事達が忙しげに立ち働いていたということが明らかに告白されているわけだ。
 だが一体、全く××と関係のないことならば何も刑事や制服の警官を使わなくてもいい筈だし、又そんなものを使役しても何の役に立つ筈もない。少くとも普通の「有志」や何かでは不充分で高等課の警官を必要とした以上は(必要でないなら高等課が設置され存続されて評判を悪くする筈もあるまい)、刑事や制服は恐らく、この××と関係のない事柄をも××と関係づけて、或いは関係づけそうな態度で以て、取り扱ったに相違ない。選挙干渉と云ったって、警官の強力的権力を背景にしなければ全く無意味だが、警官のこの強力的権力の火が犯罪の煙のない処には発しないものだということは天下の常識である。すると高等課の警察行政としての欠点は、例えば政党政治や其他色々(夫は後で考えよう)の必要から、××でないものに就いてまで××の成立を示唆することによって、警察権力を活用するという点にあることなる[#「あることなる」はママ]。之が無用で××で××であることは云うまでもない。
 高等警察が政党政治の傀儡だからいけないという理由は、だからごく悪く常識的な理由に過ぎないのであって、実は政党政治其他[#「其他」に傍点]の必要に応じて警察行政上の××をやる常習機能だからいけない筈だったのだ。実際「高等」警察は何も政党政治や何かに限られているものではなく、又単に政治や経済や宗教の問題に限られているものではなくて、一切の越権は、一切の職権×用は、皆多少とも「高等」政策の意味を有っているし、又高等政策の必要に迫られたものが多いのである。一体高等警察というのは、犯罪の性質が主に高等(?)であるからとか、犯罪者が主に高等(?)な社会階級にぞくしているからとか、いう点も多分にあるが、併しそれは先ず、高等政策警察[#「高等政策警察」に傍点]を意味しているのである。高等政策警察というのは何かと考えて見れば、要するに犯罪に対して、本来の警察(下等警察?)の権限外に立って、取捨選択を行うことだ。ある一定の外部からの必要に応じてある行為を××として取り上げるか上げないか、というようなことがその意味だ。即ちここでは××が××されたり××されたりするわけである。でこの意味で、警官の普通の××××は皆「××」警察の意味を持っているのであり、所謂××××と所謂高等警察との違いは、ただ単に、本来の下等警察(?)に対する警察外的必要が、個人のものであるか組織的なものであるかに過ぎない。
 警視庁の警務課長武内某氏は、××××と通謀したという嫌疑で検事局の召喚を受け、遂に辞表を提出した。頭山満家の名を××して右翼思想団体を自称する××会の幹部某を紹介して、各種の会社を廻らせ、会社の弱点を教示して恐喝の資料を提供したばかりではなく、この恐喝事件の犯罪捜査の情勢をこの犯人に通じたり、検事の令状を三度までも握り潰したりしたことが判明したのである。処で警務課長である武内氏は犯罪捜査の情勢に通じる筈がないのに、之を知っていたとすると、武内氏の身辺に、××で×××がいなければならなくなるわけで
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