インチキは普通だそうです、それを十分に調べて下さるのがお役所でしょう」(東朝五月五日朝刊)。
 五円の金が十円で売れるとなると、金は例の有名な物神崇拝性という魔術を振い始める。有形無形の金鉱が試掘され又は試掘権が売れ始める。或る者はショーヰンドーで街頭の金鉱を試掘する。金はたしかに幻影を産んでいる。だがこの幻影にはチャンとした客観的な金相場という物質的根柢がある。相場は人気で決まるように聞いているが、その人気が売買関係という客観的で物質的な地盤の上で正確に決まって来ている。処で満州という観念も亦今は甚だ人気がある。満州という観念は物神崇拝性と同じような魔術を持っている、満州という観念は一つの幻影を産んでいる。処がこの幻影は、「永遠の楽土」、「搾取なき天地」等々という精神的[#「精神的」に傍点]な地盤にその根を持っているのである。
 リットン卿は甚だ認識不足であったと云うべきだろう。だがリットン卿の認識不足ばかりを余り非難しすぎる、と薬が利きすぎて、今度はこっち側で認識不足をやり始めるのである。そうして当局が憤慨されたり、職業紹介所が恨まれたりする破目に陥ることになるのである。ここの処、当局の手加減に一段の苦心の要る処かも知れない。あまり正直な満州ファンを沢山造り過ぎるのは、どうも少し策の得たものではないではないかと考える。――拓務省では、満蒙自衛移民のために花嫁の周旋を始めたそうであるが、満蒙自衛移民のために周旋するのならば問題もあるまいけれども、逆に、花嫁のために満蒙自衛移民を御亭主として周旋するというような顔をするのだと、あまり罪造りな結果にならないように希望したいものである。何しろ相手は純真で××られやすい娘達なのだから。

   二、思想対策協議会

 地方長官会議、司法官会議、諸種の学校長会議、そうした会合で問題になるのは最近では殆んど所謂「思想対策」だけである。内務省も司法省も、文部省もこうした会合を専ら思想対策会議の積りで召集するかのように思われる。第六十四議会では思想対策決議案が可決された、だから政府は思想犯罪防止の機関を設置しなくてはならない義理がある。各省事務次官会議はその相談に熱心であったが、一策として、内務省・司法省・文部省が協同して、相当権威ある機関を設置しようという案も出ているが、結局政府の手によって「思想対策協議会」なるものが出来上った
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