, Reconstruction in philosophy, 1920; Schiller, F. C. S., Studies in humanism, 1907.
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[#中見出し]マッハ エルンスト Ernst Mach(一八三八―一九一六)[#中見出し終わり]
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 オーストリアの物理学者(数学者)、感覚生理学者にして哲学者。キルヒホフ(Kirchhoff)に酷似した現象主義(実証主義の一規定)が彼の思想の一つの特色をなす。人間の感覚は同時に「世界の要素」であり、この感覚の結合を離れて世界がそれ自体にあるのではないという(所謂マッハ主義)。例えば原子も実在性を有つのではなく、単にかかるものを思惟することが思惟のエネルギーを経済的にするが故に、初めて原子を思惟することも真理であり得ると考える(思惟経済説)(この点プランク(M. Planck)との論争が歴史的)。併しマッハの最も優れた他の一つの特色は、自然科学に関する歴史的認識の意義を重大視したことにある。之は進化論の思想を介して、向《さき》の思惟経済説と現象主義とに結びついているが、物理学の理論的歴史をこの立場から書き得たことは恐らく彼の永久の功績である。
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主著――Die Geschichte und die Warzel des Satzes von d. Erhaltung d. Energie, 1872; 〔Die Prinzipien d. Wa:rmelehre〕, 1886; Die Mechanik in ihrer Entwicklung, 1883; Die Analyse d. Empfindungen, 1885; Erkenntnis und Irrtum, 1905.
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[#中見出し]模写説 モシャセツ 【英】Imitation−theory【独】Imitationstheorie, Abbildtheorie.[#中見出し終わり]
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 一般に認識は、客観的実在の主観乃至意識による写し(コピー)(模倣・反映)であるという認識理論を指す。唯物論による認識理論は之に立脚する。観念論哲学の多くの場合は、之を客観的実在をそのまま一遍に全部的に模写し終ることが認識であるという主張だとして説明しているが、この説明には説明者自身の方からの誤った独断が※[#「※」は「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]入されている。実在は一遍にはその全貌をありのままに写され得ないことは明らかであり、もしそうでなければ認識の進歩発達ということはあり得ないことになる。この独断に立脚する者は、その条件を具えた限りの模写説が立脚する処の唯物論を素朴実在論と呼び、之れを最も常識的で非哲学的な認識論に立つ哲学体系だと主張するが、かかる「模写説」もかかる「素朴実在論」も、本来の模写説と本来の実在論(即ち唯物論)とからは、かなりかけ離れたものなのである。
 唯物論の認識論としての本来の模写説は、実在が意識によって全体的に一挙に模写し尽せるものとは考えず、常にその模写作用の歴史的過程に注意を集中する。之によれば、客観的実在は、まず第一に、感性(感覚乃至知覚)によって捉えられる。だが無論之はまだ実在の全部を捉えたのではない。感性は経験の最も端初的な形態であるが、経験の歴史的蓄積と整頓とはやがて理論を生みいだす。之が普通悟性乃至理性の仕事と考えられているものである。理論は経験から経験的に発生したものであるが、併し一旦理論という形にまで経験的に抽象された以上、この理論はその後の経験の指導に当ることが出来る。経験の一つ一つは其後と雖も無論理論的なものではないが、そういう経験が進行する軌道を導くものが理論であるので、そうでなければ理論は経験から区別される理由を見出し得ない。理論的な原則・原理が経験的なものでないと考えられ、従って先天的乃至先験的なものと考えられ易い所以である。
 故に模写とは常に認識構成の過程に即してしかあり得ない。処がこの認識構成の原動力は、それが感性から始まった通り、思考的なものではなくて実践でなくてはならぬ。処で実践は感性から始めて実験・産業などの内容を含んでいる。その意味に於ける実践を媒介として初めて認識は成立、発達するのであり、そしてそれが実在の模写ということである。併し模写説は元来特別な認識理論を意味するのではなく、寧ろ認識ということは模写ということに他ならないという、一つの端的な事実を云い表わすに過ぎない。認識は無論真理でなければ
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