nが残される。ここに現代資本主義的ジャーナリズムの特有な教育機能の一応の進歩性が横たわる。だが之は無論まだ所謂プロレタリア・ジャーナリズムではない。ソヴィエト・ジャーナリズムは進歩的教育機能に於て著るしく発達していると見られている。


進化論 のうち
 【進化論と社会学】  生物学及び古生物学・地質学等の博物学(自然史)は十九世紀の後半に著るしい進歩を遂げたが、その結果第一に発達したものは社会の生物学的有機体説である。一般の社会有機体説または全体説は旧くから広く行われていたが、それが特に生物学的な実証的根拠を与えたように見える。リリエンフェルト P. v. Lilienfeld(1829−1903)・シェフレ 〔A. E. P. Scha:ffle〕(1831−1903)・ヴォルムス R. Worms(1869−1926)・ノヴィコフ J. Novikov(1849−1912)等によれば、社会現象は一種の生物的有機体の現象に他ならぬ。だがこれは結局、社会を生物体に類推したものに過ぎない。第二は人種論的社会理論である。人種・淘汰・遺伝等が社会の最大な決定要因だというのであってゴビノー J. A. de Gobineau(1816−82)やラプージュ V. de Lapouge(1854−1936)等が之を代表する。この理論によると世界の人種の間には先天的に優劣の差があるのであって、今日の人種的排外主義の理論的根拠の有力な一つとなっている。だが元来、社会関係がこのような生物的関係に還元出来ないことは論を俟たない。第三は生存闘争(生存競争)に関する生物学的理論を任意に社会機構にあてはめる場合であって、ノヴィコフやヴァッカロ M. Vaccaro が之を代表する。今日社会ファシズムの一支柱となり好戦主義の根拠となるものの一つである(例えばヘッケル)。だがクロポトキン P. A. Kropotkin(1842−1921)やバジョット W. Bagehot(1826−77)の相互扶助論が指摘しているようにこれは生物界の事実にも合わないし、又元来ダーウィン説の非科学的な濫用に他ならない。
 進化論・ダーウィン説の科学的核心は、自然界の歴史的発展の思想に実証的な根拠を与えたことであるが、之を最も正当に社会理論に適用したものはマルクス主義に他ならない、その意味で唯物史観は「社会の自
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