@するものは社会に関する科学としての社会学であるが、之に反して社会を先験的・超越的に考察するものが社会哲学だと考えられる。社会が如何なる意義[#「意義」に傍点]をもち、何のために[#「何のために」に傍点]あるかをそれは省察する、一切の社会事象のあり得べき理性的な結果・目的を問題とするのが社会哲学であるという。元来今日社会学と呼ばれる科学は実は社会哲学が科学的に純化限定されて発生したものであるから、その限り社会哲学は社会学と直接の繋りを持っているが、併し現在では社会学なるものの性質は多くの異説があるにも拘わらずほぼ共通な科学的特色を有っている(形式社会学はこの特色を最も露骨に代表する)。ところが所謂社会学者の内でも優れた学者の多くは、多少とも社会哲学的な根柢を持っているのである。社会学という言葉と概念とを提唱したと一般に云われているコント、之を受け継いだスペンサー、之をアメリカに於て発展させたウォード L. F. Ward(1841−1913)等は、その社会的洞察が包括的で統一的である点で社会哲学者に数えられていい。ホッブハウス L. T. Hobhouse(1864−1929)の形而上学的社会理論、ルードウィヒ・シュタイン L. Stein(1859−1930)の哲学的社会問題の取扱い、テニエス 〔F. To:nnies〕(1855−1936)の主意説的な社会分析、ミヘルス R. Michels(1876−1936)やグンプロヴィチの社会生活の根本問題の検討、リットやフィアカント A. Vierkandt(1867−1953)其他の現象学的社会学、ウォルムス R. Worms(1869−1926)の『社会科学の哲学』、バルトの『社会学としての歴史哲学』など、いずれも社会哲学の名に値いし或は自らかく名乗る処の社会学[#「社会学」に傍点]に属する。
併し社会哲学はその名の示す通り、一種の哲学[#「哲学」に傍点]或は哲学の一部門に他ならぬという意味を有つ。古来有力な哲学の殆どすべては必ず社会に関する哲学部門をその体系の重大な部分として有っている。プラトンの国家・政治理論、アリストテレスの政治学・国家論・倫理学を始めとして、近世ではホッブズの『レヴィアサン』(Leviathan, 1651)、スピノザの政治論、ロック・モンテスキュー de Montesquieu(1689
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