ノ及ぶ)、第二の形態は経済学[#「経済学」に傍点]であり(ギリシアに於ては家計理論であったものが十六世紀以来今日の経済学の形をとるようになった)、第三の形態は、歴史記述[#「歴史記述」に傍点]であり(ヘロドトス 〔He^rodotos〕・トゥキュディデス 〔Thoukydide^s〕 に始まる)、第四の形態は法律学[#「法律学」に傍点]である(但しこれはローマに発する)。十九世紀の初めに至る迄、この種の諸形態が混合して漠然と社会科学と呼ばれた。それは歴史哲学乃至社会哲学とあまり区別を持たない。だが近代科学的な社会科学は二つの方向に分離した。一つは人類学[#「人類学」に傍点]・犯罪学[#「犯罪学」に傍点](ベッカリーア C. B. Beccaria)、更に特に社会学[#「社会学」に傍点](コント)であり、一つはマルクス主義的社会科学[#「社会科学」に傍点]である。マルクス主義的社会科学は、サン・シモン C. H. de Saint−Simon・フリエ F. M. C. Fourier・オーエン等のユトーピア社会主義から発達して、科学的社会主義として成長した。
社会学[#「社会学」に傍点]が一般に諸社会現象の形式的乃至現象的な体系を組織するに対して、マルクス主義的な(厳密な意味に於ける)社会科学[#「社会科学」に傍点]は諸社会現象を貫く内容的実体的な本質を組織する。
【社会科学の構成要素】 厳密な意味での社会科学として今日広く承認されている殆ど唯一のものはマルクス主義によるそれであり、史的唯物論[#「史的唯物論」に傍点](歴史の唯物論)即ち唯物史観[#「唯物史観」に傍点]である。唯物史観には三つの契機が含まれている。(一)[#「(一)」は縦中横]唯物論[#「唯物論」に傍点]。これは十七乃至十九世紀のイギリス・フランス・ドイツの支配的な近代哲学の一つに淵源する。(二)[#「(二)」は縦中横]弁証法[#「弁証法」に傍点]。これは近世ドイツ古典哲学の結論である。(三)[#「(三)」は縦中横]歴史観[#「歴史観」に傍点]。これはイギリスの古典経済学とフランスの社会主義理論となって現われたもの。この三つの契機をもつ史的唯物論は所謂自然弁証法[#「自然弁証法」に傍点]と合わせて、弁証法的唯物[#「弁証法的唯物」に傍点]論をなすものであり、一般に漫然とマルクス主義の理論と呼ばれ
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