をも揺り動かし始めていることを知らねばならぬ、と云うのである。
 自然科学に関するこうした新しい姿の科学論が、唯物論乃至マルクス主義をめぐって問題を展開する他ないことは、今日の必然的条件である。今日科学論が、自然科学の思想化的傾向との連関の下に、思想的な時局性を以て登場・台頭して来た以上、この条件は必然であらざるを得ないのである。この点社会科学其の他の、初めから学問形態がやや社会的な塵にまみれ勝ちな場合と較べても、少しも変りはないのである。最近はゲシタルト理論を介して、心理学をめぐる科学論の発達は、重大な意義と豊富な未来を有つものだと思うが、ここでも亦、心理学の思想的[#「思想的」に傍点]通路への抜け出しを見とどけることが出来るだろう。
 社会科学・歴史科学・は云うまでもなく、自然科学のこうした思想化的傾向なるものは、原理的に云えば少しも異とするに足りない当然なことである、それは勿論だ。併し吾々の云いたい処は、特にアカデミックな社会環境を持つ処の自然科学、而もブルジョア・アカデミーの自然科学、そればかりではなくこのブルジョア・アカデミーの殆んど絶大な国権的威力と共にでなければ存続出来な
前へ 次へ
全21ページ中13ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング