技術的精神とは何か
戸坂潤

−−
【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)強調したまずい[#「まずい」に傍点]例として
−−

 技術的精神は近代文化の根本精神であると私は考えている。それを説明したいと思う。ジェームズ・ジョイスの『ユリシーズ』物語つまりオデュッセイア物語の主人公は、ディーダラスで、之はオデュッセイア(ホメロスのものと云われるあのオデュッセイア)に於ける主人公テレマコスに該当すると、評論家は云っている。処で土居光知教授によるとこのディーダラスという名は、ギリシア語のダイダロスの心算であって、技術を象徴するものだという。
 私はこの注意がどれだけの深い内容を有っているのか、よく知らない。併し古典ギリシアの現代的飜案(と云っては当らぬかも知れぬが)で、何か技術と関係のあるものが認定されているということならば、それは面白いことだ。ジョイスのこの小説は所謂意識の流れの文学として、近代的な主観や自覚(自意識)の分析に立つ点で、云うまでもなくモダーニズムの一種にぞくし、その雑然たる中の何等かの統一までが、よく近世生活のテン
次へ
全18ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング