ポに似たものを伝えるのであるが、それだけではなく何か技術的な或る物を連想させるものがあるとすれば、その側面からも亦近代的な意義を有つだろう。
技術的精神とは何を指すのか、技術とどういう関係があるのか、そして技術と呼ばれているものが何であるか、しばらく後にしよう。少なくとも技術的精神という言葉によって、常識的に理解される若干のものは、あるだろう。併しそれならば、必ずしも近代に固有な精神であるとは限らない。又近代に於て初めて支配的になった精神であるとも考えられない。寧ろ例のホメロスのエポス時代からギリシアの哲学が分離独立した道徳となっているタレスは、他ならぬ技術的精神をその特色としていた。彼が世人の注目を買ったのは、天才や土木、軍事技術などに関する独特の才能であった。プラトンは彼を以て、星を眺めながら溝に落ちた人生の観照者として紹介しているが、もっと忠実な歴史家であるアリストテレスは彼を卓越した実業家乃至利殖家として紹介している。ギリシア哲学がバビロン・エジプトの技術学とどんなに密接な史的関係があるかは、科学史家や技術史家の想定する常識となっている。
だから技術的精神をごく一般的に、又
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