傍点]を云い表わすのに至極都合よさそうに見えるかも知れない。普通人々の有っている空間という概念――人々が普通有っている概念が必ずしも常識的概念ではないことを忘れてはならぬ――が、例えば「空間は何処にあるか」と問われる場合のように***、物体性として説明され易い点に注意すれば、それに較べては、空間性の概念はなる程吾々にとって有利であるようである。又空間を吾々のように空間として(空間性としてではなく)理解するとしても、場合によってはこの空間を説明する為めに空間性という概念を欠くことが出来ないと考えられるかも知れない。このことが必然性を有たないということを吾々は最後に見る筈である****。仮にこのような場合を除いても、人々は多くの場合、空間性によって、空間ではなくして空間のアナロギーに過ぎぬものを意味しようと欲することも亦事実であるであろう。そしてこの空間のアナロギーを以て逆に空間そのものを空間性として説明するとすれば、空間の性格は疎外されて了わなければならない。アナロギーが性格を誤ることを吾々は前に指摘して置いた。それ故空間性を以て空間に代えることは出来ない。空間のみが空間である。
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