も必要であるからである。故に吾々の空間概念――それは常識的である――にあっては、空間が物体的[#「物体的」に傍点]であるか無いかという問題、従ってより一般に、空間が実[#「実」に傍点]であるか虚[#「虚」に傍点]であるかという問題は、成立する動機を持つことが出来ない筈である(たとい物理的空間概念に於てそれが成立するとしても*)。何となれば実も虚も物体性を基準として成り立つのであるが、この物体性はとりも直さず存在者[#「存在者」に傍点]の概念にぞくする、処がそれは存在性[#「存在性」に傍点]の概念とは別なのであるから(併しそれであるからと云って空間が物体的ではない[#「ない」に傍点]、虚である[#「ある」に傍点]、ということは出て来ない。存在者の概念[#「存在者の概念」に傍点]に於て与えられた区別を存在性の概念[#「存在性の概念」に傍点]にぞくするものが守らなければならない義務はないから)。之に関連して空間は運動[#「運動」に傍点]し得るか否かと云う問題も亦今と同じ理由によって成立しない。空間は一つの存在性[#「存在性」に傍点]の概念である。
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