ようと欲する時、実際上、必ず空間概念が要求されるのである。人々は或いはこう云って反対するかも知れない、実在と表象との区別は、或いは主観の普遍的必然的構成であるか否かによって、或いは自我の奥底に於ける統一であるか否かによって、始めて与えられるのであって、其処に空間を持ち出すことは何の説明にもなりはしないと。けれども再び吾々は繰り返そう、吾々の云う空間概念は常に一つの常識的概念である、それは実在と表象との区別を哲学的に説明[#「説明」に傍点]することは出来ないし又しようとも思わない、ただ実在と表象とを人々が普通[#「人々が普通」に傍点]何によって区別しているかということだけに答えることが出来ればよいし、又それだけには答える義務があるのである。人々は実際机と机の表象とを区別する為に[#「為に」に傍点]空間概念を要求[#「要求」に傍点]するのである。人々は両者の区別の深遠なる――そして専門的なる――意義を教えられるよりも、両者の区別を確保することが更に必要[#「必要」に傍点]なのである。この必要を満足せしめるものが人々の持つ[#「持つ」に傍点]、従って吾々の求める[#「求める」に傍点]、空間概
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