験し得る[#「し得る」に傍点]処の空間――之を empirischer Raum と呼ぼう。之は英知的乃至幾何学的空間ではないという意味に於ける消極的規定しか持たない空間概念である。積極的内容を有たないから之は除こう。第二に経験という認識形態[#「経験という認識形態」に傍点]に於て成立する空間――之を Erfahrungsraum と呼ぼう。もし経験を一定の法則に従って構成されたる学問的[#「学問的」に傍点]体系乃至その素朴な形態と考えるならば、経験的空間は物理的空間[#「物理的空間」に傍点]となる。物理的空間は経験に於て与えられなければならない――それは「実在的」と呼ばれる。けれどもこの意味に於ても亦、経験に於て与えられるということが常識的概念であることになるのでは決してない。事実それは一つの物理学的概念、従って正に一つの専門的概念に外ならないであろう。もし又経験を知覚[#「知覚」に傍点]と解するならば――知覚はまだ前の意味での経験ではない――経験的空間は感覚的に与えられた空間表象[#「空間表象」に傍点]となるであろう。この時空間は一つの心理学的概念に外ならない。心理学的空間[#「心
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