出来るのである。吾々の準備した言葉を用いて云い直すならばこうである、空間は一つの常識的概念[#「常識的概念」に傍点]である、それであればこそ或る夫々の特定の領域の専門的研究によって産み付けられることを俟たずに而もその領域の問題となることが出来る、そしてこの夫々の領域の問題となる時、空間は又専門的概念[#「専門的概念」に傍点]ともなるのである。
 一定であると想像する理由のある常識的概念「空間」も、専門的概念となる時、向に示した通り、決して唯一であることは出来ない。吾々は幾つかの専門的な空間概念を知っている。第一に挙げられるべきは幾何学的空間[#「幾何学的空間」に傍点]概念でなければならない。幾何学が空間の学(数学)であるという理由によって、幾何学に於て空間と見做されるもの――幾何学的空間――を、吾々が日常その内に生活して経験している空間と同じに見ようとする人々は、それ程多くは見受けられないであろう。すでに幾何学的空間は経験的ですらない、況して吾々の云う処の常識的概念であることは出来ない。次に経験的空間[#「経験的空間」に傍点]という概念のもとに人々は異った多くのものを理解する。第一に経
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