されるであろう。

   二 問題――空間概念の分析[#「空間概念の分析」に傍点]

 空間は思うに、一つの特殊なる学問又は更に一般に特殊なる文化領域に於て始めて、問題として発生するものではなくして、これ等の領域に対して云わば始めから与えられたものとして現われるものであるということが出来る。例えば近代の階級という概念は経済乃至政治の領域に於て始めて発見される、この概念は云わばこの領域の出である。之に反して空間という概念はそれが発生するこのような固有な故郷を有たない。空間という問題は特殊の領域に於て形づくられる問題ではなくして、既成の問題として、種々なる領域に於ける問題となって取り入れられることが出来るのである。空間の問題は様々の領域に渡って――併し無論領域それぞれの色彩を具して――横断する、之は注目に値いする事柄であると思う。空間の問題がそれを取り込んだ夫々の領域の色彩を帯びているために、茲には決して一定した同一の空間の問題の形態はないように見える。空間はそれぞれ特有な仕方に於て問われているかのようである。処が元来何れの領域も空間という既成の問題を取り込んだのであるから、その限り空間の
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