証はないであろう。そしてもしその存在なるものが、物質的――空間的存在はかく呼ばれてよい理由がある――と形容し得るものではなくして、正にその反対なものとして理解される時、空間概念の解釈は必然に吾々の夫と異って来なければならない。元来空間の性格であると考えられた世界――自然的世界――は、このような場合の自然の概念がそうであるように、物質的として理解されるべき要求を有つ。物質的という言葉が不明瞭であるならばこう云い改めることが出来る、空間的世界は客観[#「客観」に傍点]として理解されるべき性格を持つと。尤も主観と客観という二つの面を対立せしめて、空間的世界がこの客観にぞくすというのでは決してない。吾々は元来空間の問題に於て――それは存在論的である――そのような主客の対立を許すことをしない。ただ、このような二面の対立を云い表わす概念としてではなく、独立な規定として、しかもそれも物質的という言葉を注解する目的の下に、客観という言葉を用いることを許されるならば(そしてそれは主観の反対である)、そのような客観であることを吾々の空間・存在・世界の概念は要求するのである。そこでもし存在がかかる客観ではな
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