(ポアンカレに従って)数学的連続を物理的連続から区別している。さて延長の、そして常識的なる、連続概念は、どのような性質を有つか。この時連続を無限[#「無限」に傍点]に関係づけて理解することが有効であるであろう。無限も亦数学的概念として成立し、そして数学的連続概念と結び付いている。吾々はかかる概念から独立に、そして特に延長の無限として之を理解することが必要である筈であった。而も同じく延長の無限又は有限であっても吾々の求めるものはかの数学的空間の夫、又は物理学の所謂宇宙の持つ夫であることは出来ない。それ故吾々の常識的無限概念は――リーマンの言葉を借りるならば、――却って「無限」ではなくして「無際限」でなければならないのである。そこでアリストテレスは、無限に就いて、そして夫と連続との関係に就いて、語っている。「無限はヒューレーとしての原因であり、そして無限の本性は欠如であり又その基体それ自身は知覚し得る連続である、ということは明らかである**」と。この言葉は恰も今の吾々の場合にとって非常に適切であるであろう。即ち無限とは延長的(空間的)原因であり――延長としてのプラトンのヒューレーを茲に憶い起こすべきである――、それは際限なきこと[#「なきこと」に傍点]であり、そしてかかる無限の基体となるものが連続であるのである。それ故延長は連続を有ち、この連続の上に於て延長の無限が成り立つのである。かかる連続の上に於て始めて吾々は限りなきものを限ることが出来る。形は茲に成立の基礎を持つ。
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* 空間を不連続的なものと考えた代表的なものは Boscovich 及びヴォルフである(Poppovich, Die Lehre vom diskreten Raum in der neueren Philosophie 参照)。――そして不連続性が多くの場合空間の有限性を伴うたのはそうありそうなことである。
** Physica, 207 b―208 a.
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延長に於て第三に含まれるものは長さ[#「長さ」に傍点]である。距離[#「距離」に傍点]又は間隔[#「間隔」に傍点]の概念を以て之に置き代えることも出来るであろう。遠近[#「遠近」に傍点]概念は之を基礎として始めて理解される。併し素よりこの長さは数量を以て何かの意味に於て測定
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