握」に傍点])と共に初めて語られることが出来る。かかる概念(把握的概念)は性格[#「性格」に傍点]を概念し動機[#「動機」に傍点]を有つ。概念の分析[#「概念の分析」に傍点]は概念自身を源泉[#「源泉」に傍点]として行なわれなければならない。即ち概念は、その性格と動機とに従って又それに於て、分析される。何となれば概念は歴史社会的制約[#「歴史社会的制約」に傍点]を以て存在[#「存在」に傍点]するから。併し概念は決して事実としては与えられていない、それは発見[#「発見」に傍点]されなければならない。分析は常識的概念の分析から出発すべきである。何となればそれは歴史社会的制約に於てより根柢的な基礎概念[#「基礎概念」に傍点]であるから。――さて吾々の問題、それは空間概念の分析[#「空間概念の分析」に傍点]の問題であった、を正当に提出し得るためには、以上のような準備をしておくことが是非とも必要であったと思う。併し今迄に触れるべき点に残らず触れたとは思わない、無意識に看過した点もあろうし、又故意に省いて後の機会に譲った点もある。このような点は実際に問題を取り扱うに当って、必要な限りその折々に分析されるであろう。

   二 問題――空間概念の分析[#「空間概念の分析」に傍点]

 空間は思うに、一つの特殊なる学問又は更に一般に特殊なる文化領域に於て始めて、問題として発生するものではなくして、これ等の領域に対して云わば始めから与えられたものとして現われるものであるということが出来る。例えば近代の階級という概念は経済乃至政治の領域に於て始めて発見される、この概念は云わばこの領域の出である。之に反して空間という概念はそれが発生するこのような固有な故郷を有たない。空間という問題は特殊の領域に於て形づくられる問題ではなくして、既成の問題として、種々なる領域に於ける問題となって取り入れられることが出来るのである。空間の問題は様々の領域に渡って――併し無論領域それぞれの色彩を具して――横断する、之は注目に値いする事柄であると思う。空間の問題がそれを取り込んだ夫々の領域の色彩を帯びているために、茲には決して一定した同一の空間の問題の形態はないように見える。空間はそれぞれ特有な仕方に於て問われているかのようである。処が元来何れの領域も空間という既成の問題を取り込んだのであるから、その限り空間の
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