幾何学と空間
戸坂潤

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【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]む

〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔F. Klein, Elementarmathematik von ho:heren Standpunkt aus 2. Kap. III〕
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://www.aozora.gr.jp/accent_separation.html
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 幾何学とは何であるか、之が私の問題である。云い換えれば、幾何学が或る一種の数学であることを承認し且つ一般に数学の真理が先験的であることを予想するとして、幾何学の――数学一般の、ではない――真理は如何にして成り立つか、というのが私の問題である。更に云い換えれば、幾何学は特殊の数学として如何なる特徴を有っているか、という問題である。

   一

 先ず何よりも始めに幾何学なるものの概観を得ることが必要と思われる。恐らく幾何学には無限の種類があるかも知れない。併し何れも幾何学なる名に於て統一されている以上それを一貫する何ものかがあってそれがその区別を与えているのでなければならぬ。吾々は之を攫むことによって幾何学を分類することが出来る筈である。クラインによれば凡ての幾何学は夫々或る一定の形を持った変換に対して不変に残されるものの不変量理論(Invariantentheorie)と考えられるが、クラインは之を解析的に云い表わすことによって幾何学の分類を与えようとした。
例えば類同幾何学は
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[#式(fig43263_01.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
なる類同変換に関する不変量理論であり、又射影幾何学は
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[#式(fig43263_02.png)入る]
[#ここで字下げ終わり]
なる射影的変換に関する夫である。これらの変換は夫々一つの変換群をなすのであるから一般的に云う時各々の変換群に対して一つずつの幾何学が成り立つわけである。即ち解析に訴えることによって更に又群の概念を借りることによって吾々
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