v惟に基く――が、併し思惟は直観内容そのものを云い表わす以外のものではない――即ち思惟は直観に基く――という関係に於ける思惟と直観とである。この場合の特徴は両者が互に他のものによって代表されることが出来るということである。この意味に於て思惟と直観とが同一のものとして取り扱われても差閊えがないということである(第一の場合は明らかに之を許さない)。このようにして思惟と区別された直観を知的直観と定義しよう。さて直観の根本的な二義をこのように区別するとすれば幾何学的直観と空間直観との区別を明らかにすることが出来る。幾何学的直観は向に明らかにした通り――二を見よ――幾何学に於て思惟によっては尽すことの出来ないものの存在を意味する。即ちそれは幾何学の基礎でなければならぬ。即ちこの意味に於てそれは幾何学を基けている。且又幾何学的直観の内容を規定するには幾何学そのものによる外はない。即ちこの意味に於て幾何学は幾何学的直観を基けている。然るに幾何学が数学である以上は一種の思惟の体系である。従って幾何学的直観は思惟に基き又之を基ける。それ故幾何学的直観は定義に従って知的直観に属する。そのことは又、幾何学的直観は幾何学――思惟の体系の一つである――によって代表される、という結果をも伴う。次に空間直観はカントが説いているように――三を見よ――悟性ではない。思惟ではない。空間直観は悟性概念――即ち範疇――ではない処にその特色があった筈である。従ってそれは思惟に基くものでも思惟を基けるものでもない。思惟は思惟であり空間直観は空間直観である。故に空間直観は定義に従って感性的直観に属していなければならない。両者をかく区別した上で次にその関係を求めよう。一般的に感性的直観は思惟とは独立であるがそれは両者の結合が不可能であるということではない。併しカントも考えたように両者が結び付くためには第三者が必要である。予めこの第三者があってそれに基いて両者が結び付く理由が始めて在ると云わねばならぬ。併し予想された第三者の内容は両者の結合の結果としてしか現われることは出来ない。即ち感性的直観と思惟との結合の結果が予め予想されてあったものに相当しなければならない。云い換えれば両者が結合し得るという可能性は両者が本来結合していなければならぬものであるという必然性に基いている。処が後の場合の必然性は明らかに知的直観に外
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