驍ゥ。それが経験から来るか又は純粋直観から来るか或いは又何か他のものから来るかは問題の外として、与えられるとは公理によって生産される処の要素乃至対象に他の要素乃至対象が偶然付加されるということに外ならない。今位置解析に於て連続の公理によって生産される処の対象は空間の連続であると云うことが出来るであろう。それでは之に偶然付加されるものとは何か。それは空間内の任意の個体としての[#「個体としての」に傍点]図形であると思う。位置解析に於ては対象として任意の個体としての図形が与えられているのである。結合(Konnexus)というような概念は一つの図形に於て、而も他とは独立な個体としての図形に就いてのみ許されるものである。射影幾何学は空間一般の関係を論じると云ってよいが、空間一般の関係と云っても図形を離れて之を攫むことは出来ない。併しこの図形は一般的な関係の一例として構成されるのであって、決して個体としての独立性を有っているのではない。一つの対象が二つに切り離されるということは射影幾何学に於ては無意味と云わねばならぬ。それ故与えられるとは個体が与えられるのである。位置解析はこのような意味での図形に関係し、之に反して射影幾何学は空間そのものに関係すると云うことが出来るであろうと思う。さて幾何学の対象が空間であることを仮定するとすれば、空間と空間内の図形との区別に基くこの区別、射影幾何学と位置解析との区別は、あらゆる幾何学的対象に就いて見出されるべき最も根本的な区別でなくてはならぬ。であるから位置解析的であるか否かが幾何学の分類の最も本質的な標準である。質的か量的かの問題はその後始めて起こる。もし或る幾何学が位置解析に属すとすればそれは質的であり、もしそれが位置解析に属さないとすれば、計量を含まぬ時は質的であり計量を含む時は量的となる。幾何学は略々このようにして分類出来るのではないかと考える。
二
私は量的幾何学を借りて幾何学に於ける数の権利を検べて見たい。数の算法の体系ともいうべき代数が屡々幾何学の図形に応用され又図形が代数の問題の解決に補助手段を与えるということは誰しも知っている。代数と幾何学とはこのように密接に関係しているのであるが、少くとも図形が代数に応用される点は今の問題とは縁がない。反対に代数が図形に応用されるとは如何いう意味に於てであるか。例えば代数的方
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