だが、それにも拘らず、一方が芸術であり他方が芸術でない、かどうかということよりも、要するに両者とも映画であるということの方に、意義の重さを認めようとするのだ。私は芸術と非芸術とをまず第一に区別して、その上で映画芸術を前者に、映画ニュースを後者に、含ませようという分類には、すぐ様は賛成出来ない。その位いなら寧ろ第一に、例えば映画と文学とをまず区別する。そして映画の内へ映画芸術と映画ニュースとを区別した方がいいと思うのだ(文学の内には芸術的文学=文芸と文献学=古典学とを区別する)。
 芸術という文化の「ジャンル」は文化史的には最も直接な所与の現象を示すものだが、之を分析的に分解するためには必ずしも分解の要具とはならぬ。分解のための工作機械は、文学とか映画とか美術とか工芸とか建築とかいうような区別であって、夫々が芸術のジャンルにぞくしたものとぞくさないものとを持っているのである。建築は一体芸術であるかそれとも住居の用具であるか。工芸品は道具なのか芸術なのか。――でこういう意味に於て、映画は芸術であると否とに拘らず、まず第一に映画だということを強調しなくてはならない。そうすることによって初めて
前へ 次へ
全13ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング