て、今は科学が、その階級性によって、単に表面上の[#「表面上の」に傍点]科学的諸結論だけを左右されるのではないということを、注意しなければならぬ。階級性が単に科学の外面又は外郭だけに影響するのならば、科学者の公正にして冷静な頭脳や、真理への愛は、容易にそのような階級性などの圧力をはね退けて了う筈だろう。処が階級性が巣食っている処は、意外にも科学そのものの内部に、而も最も深部に近い処に、あるのである。と云うのは、科学の階級性は、科学構成の枢軸とも云うべき科学の方法[#「方法」に傍点]そのものの内に、すでに潜んでいるのである。
科学のイデオロギー性は、一見単なる社会的規定[#「社会的規定」に傍点]に過ぎないように見えるだろう。なる程確かに夫は社会的規定の外へは出ない。だが科学の論理的規定[#「論理的規定」に傍点]そのものがこの社会的規定によって制約されているとしたら、もはや之は単なる[#「単なる」に傍点]社会的規定だと云っては済まされないだろう。ブルジョア経済学とマルクス主義経済学とは、単に同じ科学が階級的利害に応じて相反する結論を与えるだけなのではない。ブルジョア経済学と雖もマルクス主
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