[#「構成」に傍点]のことだったが、科学に於けるこの構成組織は併し、科学そのものが一つの客観的な歴史的社会的存在であり、歴史的社会に於ける公共的伝承的な所産であったから、之は歴史的社会的条件によって制約された構成組織でなくてはならないわけだ。知識(模写)はすでに人間の実践活動(感覚・実験・其の他社会的実際活動)によって構成されたのであったが、今や科学のこの歴史的社会的条件に基く構成組織には、この人間の実践活動、特にその社会的実践活動の役割が又、著しく組織的となる。
処で社会人の実践活動と云えば、彼が如何なる社会階級にぞくするかによって、意識上、一等根本的な区別を生じるのであるから、従って科学には所謂階級性[#「階級性」に傍点]が発生することとなるのである。科学の階級性は、場合によっては科学をして却って愈々その科学性を高めさせるが、反対の場合には科学からその科学性の重大な部分を奪って之を歪曲する作用を有っている。往々にして、反映すべき実在の原物からの印象の強さに較べて、遙かに強力な牽制力を科学構成に及ぼすものが、この階級性なのである。
科学の階級性の議論に就いては詳しくは後に見るとし
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