失ったりするだろう各種の断片的で無組織な知識が、社会的なスケールに於て整頓され淘汰され、一定共通の形態の内に吸収整理される。知識を所有する諸々の意識乃至観念は、一つの形態[#「形態」に傍点]を与えられることによって初めて客観的に定着[#「定着」に傍点]される。と云うのは、知識は一種の観念形態[#「観念形態」に傍点]としてのイデオロギー[#「イデオロギー」に傍点]にまで客観化せられるということである。この観念形態としてのイデオロギーにまで客観化せられた知識が、所謂「科学」乃至学問なのである*。
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* イデオロギーは観念形態という意味の他に、社会意識とか政治意識とか思想傾向とかを意味するし、又単に社会に於ける観念的上部構造をも意味する。元来は社会的乃至歴史的原因によって発生した虚偽な意識の意味であった。この点に就いては新明正道『イデオロギーの系譜学』、拙稿『イデオロギー概論』〔本全集第二巻所収〕、其の他を見よ(なお後を参照)。
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 元来科学は一定単位の実在の組織的反映であった。処がこの組織的反映の内容は結局知識の組織的構成
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