との、客観と主観との、存在と意識との、対立そのものが[#「対立そのものが」に傍点]、発生[#「発生」に傍点]したのである。物と心、存在と意識、客観と主観は、単にいきなり二つ並んでいるのでもなければ、いたものでもなく、又単に論理的な仮定などとして想定される対立でもない。両者の関係それ自身が、自然的秩序に於て、宇宙時間の内に、発生した処の一関係なのだ。
さてこうしてお互いの対立を発生せしめられた存在(物・客体的実在)と意識(心・主観)とであるから、意識ある自然が他の自然界から分裂するその分岐点にまで仮に時間的に溯ったとすれば、そこには両者の直接な実在的な同一[#「直接な実在的な同一」に傍点]が横たわっていた筈だったが、処が人間が生まれるのは、すでに存在と意識とが分裂対立して了った後なのだから、この直接な同一は、現実には[#「現実には」に傍点]実在的なものとしてはもはや存在し得ない。意識は云わば祖先以来の記憶(プラトンの想起説に於けるような)のようなものとして、観念的に[#「観念的に」に傍点]、存在とのこの直接な同一性を再発見する他はない。実在的な直接的同一の代りに、存在と意識との間の非実
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