験なのである。して見ると、現実の事物の実際的な[#「実際的な」に傍点]認識のために必要な認識方法=範疇組織は、実験の内にその先端を有つような夫でなくてはならぬということになる。範疇組織がすぐ様実験の用具ではあり得ないが、実験という認識の根本特色を保維し生かすための概念組織が、唯一の正当な範疇組織でなくてはならぬ、というのである。
 認識のこの実験的[#「実験的」に傍点]な特色(それは特に自然科学の科学性をなすものに他ならなかった)を社会的に云い直せば、認識の技術的[#「技術的」に傍点]な特色だということになる。蓋し実験と技術とは実践の系列の二項目であって、人間が自然に対して能動的に直接働きかける社会部面は、技術の領域に他ならないからである。この意味から云って正当な意味に於ける範疇組織は、必ず技術的範疇組織[#「技術的範疇組織」に傍点]でなくてはならぬのである*。唯物論による範疇は実は正に之なのである。
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* 技術的範疇の意味に就いては拙著『技術の哲学』〔本巻所収〕を見よ。
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 唯物論のこの技術的範疇の組織は、云わば実験
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