的な特色を有っていたから、之を現実の実際性(アクチュアリティー)に照して検証し得る本来の機構を有っている。ここにこの範疇組織の実在的[#「実在的」に傍点]な地盤があるのである。この実在的な地盤に立ち帰る時、理論に於ける一時の対立や外見上救い難く見えた矛盾も、之を単一的に唯一性を以て整理出来るような、理想的方針が見出されるわけである。――唯物論哲学の学問性のもつ唯一性と単一性は、即ちその科学性=科学らしさは、この実験的な技術的な特質に、即ちその実際的な実践的な特色に、由来するのだった。処が解釈のための観念論的な範疇組織は、科学性にとって最も大切なこの特色を欠いていたのである。そこに立場相互間の放恣な無政府状態が出現しなければならぬ理由もあったのだ。
さて、社会科学乃至歴史科学は、この唯物論になる技術的範疇組織と結合する時、初めてその唯一性と単一性とを、即ち又その科学性を、受け取ることが出来る。社会科学乃至歴史科学と哲学[#「哲学」に傍点]一般とのかの内部的結合の、唯一の正当なそして又必然的な形態は之だと云わざるを得ない。――マルクス主義は云われているようにフランス社会主義とイギリス古典
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