織としての資格を欠いた点が介在するからであるに違いない。では一般に観念論哲学の範疇組織にはどういう欠陥があるのか。
一体観念論の根本特色の一つは、それが存在の解釈[#「解釈」に傍点]だけを目的とする哲学体系=方法だということである*。与えられた与件そのものは変更することなく、ただ単に之を適宜に置きかえるということがその認識目的であって、そのための方法は、ただそうした意味の解釈[#「意味の解釈」に傍点]にさえ役立てば良いのである。だから例えば自然の存在は人間の存在よりも先であり基礎的であるという実在的[#「実在的」に傍点]な認識の代りに、自然よりも人間の方が意義が深く価値が高いという意味上[#「意味上」に傍点]の認識が、置きかえられるのである。その結果人間が自然を産み出す(神が世界を創造した)かのような口吻の哲学体系も出来上るのである。宇宙の時間の流れの秩序はどうでもよくて、意味と意味とを直接に時間抜きにつらねるために、一切が瞬間(又は永遠)に還元される(瞬間は止まれ――メフィストとの賭けに負けた[#「負けた」に傍点]ゲーテの「ファウスト」は叫んでいる、歴史の秩序を打ち切ったニーチェ―
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