―近代的な自然科学と社会科学とが発達せず、その代りに文字による学・文献学が独占的な支配を有っていた)、一般にヨーロッパに於ても古く学問という概念が、広義に於ける芸術[#「芸術」に傍点]乃至技術[#「技術」に傍点](Ars―Art―Kunst)とどれ程未分な又は混淆した状態にあったかを示している。
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* 文献学 Philologie は主に文筆の所産に関する歴史的研究とその研究方法とを意味する。広義の文筆労作(Literatur)が文献学の対象となる。――観念論哲学とこの文献学(乃至解釈学)との関係は今日特に注目に値いする。
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 学問は最も広義な又は古典的な意味における芸術乃至技術の寧ろ一部分に他ならなかった。でこの点まで学問の歴史を溯って行けば、学問はもはや芸術からさえも原則的には区別出来ないものだったと云わざるを得なくなる。芸術は天才の乃至何等かの人間の造ったものだという側面に於て、一種の生産的能動(Poiesis―Poesie)にぞくし、その限りに於て技術にぞくすると考えられた(但しここでいう生産的能動も技術も、ま
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