というのは、単に分科の学[#「分科の学」に傍点]又は特科の学[#「特科の学」に傍点]としての所謂「科学」(=特殊科学)だけを指すのではなくて、一般に学問[#「学問」に傍点]のことを指すのである。処が学問という観念乃至言葉も亦決して元来、今日普通考えられているように限定されていたものではなかった。それは歴史の教える処である。例えばフランシス・ベーコンの有名な学問の分類法によれば、詩(乃至詩学)も亦学問の一つの分枝に数えられている。今日の言葉で言えば、文学乃至文芸も亦一つの学問だというのである。
併し今日所謂文学なるものが正常な意味に於ける学問だと考えられてはいない通り、「詩」も亦元来決して今日の意味での学問ではなかった。尤も文学という言葉を特に文芸(文学的芸術)から区別して、文献学・古典学・文学的言語学という意味に用いようという提案を採用するならば*、その意味での文学は立派に一つの学問であるのだが、併しそれにも拘らずなお文芸に、この文学という如何にも一つの学問であるかのような紛わしい呼び方が与えられていることは、単に日本や支那の文化的教養の特殊性によるばかりでなく(東洋にはギリシア的―
前へ
次へ
全322ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング