士の利益を告げ、以て此等の人士より其供給を受くるなり」云々(『国富論』――岩波文庫版、上巻、二四―二六頁)。
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 即ちスミスによれば、社会に於ける労働生産力の根本条件をなす分業は、自愛心という人間性[#「人間性」に傍点]に、それ自身経済的な、或いは「経済人」的な、人間性に、基くというのである(丁度、道徳が同情[#「同情」に傍点]という人間性に基くように)。スミスの古典経済学の理論体系上の基柢は、だからその人間性論[#「人間性論」に傍点]にあると云わねばならぬ。処がこの人間性(Human Nature)の理論こそ、十七―十八世紀にかけてのホッブズ以来のイギリス道徳哲学・道徳学・倫理学(実はイギリス固有の代表的哲学)の共通な根本問題であった。例えばスミスの先輩D・ヒュームの A Treatise of (on) Human Nature の如き。
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 最後に、一般の社会思想(ユートピア共産主義・無政府主義・所謂国家社会主義乃至ファシズム・科学的社会主義等)が、各種の社会科学と歴史的に又理論的に如何に密接な連関を持つかに就いて、説明を必要とはし
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