ノ傍点]することは出来なかっただろうからだ。元来史的唯物論は、(近世)資本主義的生産関係から生じた処の、一つの特有なイデオロギーでもあったのである。だが歴史記述のこの区画は、ただ客観的な思い付きによったものではなくて、寧ろ初めから、社会の一定のマルクス主義的分析の結果[#「分析の結果」に傍点]、必然的に与えられた処のものである。――唯物史観に於ける歴史記述[#「歴史記述」に傍点]は、社会の分析[#「社会の分析」に傍点]と、表裏をなして対応する。そして歴史記述が、歴史の過去の出発点から始められねばならぬに反して、社会分析は歴史の現在に於ける到着点から始められねばならない。史的唯物論による記述方法が発見されたのが、現在の近世資本主義制度の下に於てでなければならなかった所以である。
 元来、一切の事物がそうであるが、社会の組織的構造――論理的秩序[#「論理的秩序」に傍点]――は、社会の歴史的[#「歴史的」に傍点]秩序を反映する。現在に於ける社会が持つ構造上の諸モメントは――夫が分析によって分離され且つ総合されるのである――、悉く、社会が歴史的に経過して来た処の諸モメント――夫が歴史記述によっ
前へ 次へ
全322ページ中313ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング