だ。――顕微鏡や試験管を用いなければ実験ではないというなら、そして疑問を確かめるために試みる[#「試みる」に傍点]という目的意識や、今後の先例にしようとする目的意識がなければ実験でないというなら、戦争には偵察攻撃という社会的実験[#「社会的実験」に傍点]のための戦術もあるのである。
 でこうしたわけで、実験を自然科学に於ける実験的操作に限定せねばならぬ積極的な理由はないのである。無論こう云っても、社会科学に於ける実験的操作が、自然科学に於ける夫と全く同じだというのではない。ただ実験的操作の概念を普通よりももっと拡張することが、研究手段乃至方法の統一的な理解の上から云って、必要だというのである。一切の社会的歴史的(過去の又現在の)出来事は、階級・政党・政府・インスティチュート・又個人・等々の主体の実践の結果だという資格から、一つの試み[#「試み」に傍点]である。そして又それは後々の同一性質の出来事の先例[#「先例」に傍点]となるのである。その限りこうした出来事は「実験」としての効果[#「効果」に傍点]を持っているのである。蓋し実験とは、実践[#「実践」に傍点]の最も要素的な形態に他ならず
前へ 次へ
全322ページ中207ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング