実在世界と一定の意味に於て果して一致しているかどうかが、必ず最初の問題となる。科学の方法には作業仮説というものもあれば、暫定的方法(heuristische Methode)というものも許されよう。その意味に於て科学方法は各種のシムボルに基くという考えさえも発生する。又イデオロギーは、実在の認識をば社会的与件に従って、歴史的伝統に沿うて、又階級的利害に左右されて、撓めるだろう(撓めずに却って矯める場合もあるが)。だが少なくとも科学的世界の内容だけは、初めから実在の模写そのものであることを要求される。真理[#「真理」に傍点]の問題が、ここでは一等露骨に、表面に現われて来る*。
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* 模写説(実践的な唯物論の)は真理に関する一等優れたそして一等大衆性を有った理論だと私は推断する。真理[#「真理」に傍点]の種類はとに角として(例えばライプニツによる数学的真理=永久的と歴史的真理=事実真理、自然科学的真理と社会科学的真理、など)、真理に就いての一般観念として、カントの構成主義、直覚明証説(デカルトやE・フッセルル)、社会的便宜主義(プラグマチズムやマッ
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