x上――岩波文庫――の内、或いは Marxismus und Naturwissenschaft―herg. von O. Janssen――の内)参照。――だが技術主義に陥らぬために断わっておかねばならないが、之は必ずしも「技術[#「技術」に傍点]の役割」と一つではない。
[#ここで字下げ終わり]
と云うのは、自然科学は技術学[#「技術学」に傍点]と本質上の同一性を有っている。云うまでもなく両者は技術を離れては成り立たなかった。処がこの技術的なるもの――労働手段の体系――は恰も社会科学の対象であり、従って史的唯物論の一内容に他ならない。だから自然科学の弁証法としての自然弁証法は、この技術的なるものを介して史的唯物論の一部分と合致する処の重大な一側面をもっている、というわけになるのである。――之が自然弁証法と史的唯物論との第二の連関である。
処がこう云って来ると、自然そのもの[#「自然そのもの」に傍点]自身が、一つの新しい規定をつけ加えられねばならぬことになるのである。なぜというに、史的唯物論と自然弁証法(自然科学の弁証法)との両者にぞくする共通領域であった技術なるものは、他でもないので、実は自然そのものをマスターし之を変革する処の技術の領域だったからだ。ここに技術によってマスターされた限りの自然なるものを考えなければならなくなる。之は云うまでもなく依然として自然そのものなのだが、夫にも拘らず、それが技術によってマスターされた限り、ただの自然ではなくて、社会[#「社会」に傍点]の物質的基底であり又社会的存在にぞくする自然でなくてはならぬ(発電所や植林、道路・橋梁・堤防・築港など)。明らかに之は自然そのもの[#「そのもの」に傍点]と社会との共通領域である。
そうすれば、例の自然そのものの弁証法も亦、この部分に於ては[#「この部分に於ては」に傍点]、史的唯物論の一部分と実質に於て別なものではない。史的唯物論の一部分が自然弁証法にぞくすると共に、自然そのものの弁証法の一部分が、又史的唯物論にぞくする、ということになる。之が第三の連関である。
(処でこの第三の連関から結果することは、自然そのもの[#「そのもの」に傍点]の弁証法の一部分[#「一部分」に傍点]が――併し全体がではないことを忘れてはならぬ――このようにして史的唯物論の一部面と相蔽うことによって、自然科学[#「自然科学」に傍点]乃至技術学[#「技術学」に傍点]の弁証法の一部分と、実質に於て別なものではなくなる、ということである。――之が自然そのものの弁証法と自然科学の弁証法との、連関である。)
自然と社会とは自然史的な一貫した連関を持っていた。そこから自然弁証法と史的唯物論との連関が、一般的[#「一般的」に傍点]に、必然である筈だった。今その内容[#「内容」に傍点]が、右に述べた通りだったのである*。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
* 自然科学的世界としての自然弁証法に就いて、その反映[#「反映」に傍点]としてのモメントに重点をおくか(realiter)、構成[#「構成」に傍点]としてのモメントに重きをおくか(idealiter)によって、自然弁証法と史的唯物論との比重が異って来る。前の場合には自然弁証法は勿論史的唯物論の基礎[#「基礎」に傍点]である。だが、後の場合には、自然弁証法はその時局的にアクチュアルな内容に於ては、却って史的唯物論によってリードされることになる。マルクスによって史的唯物論の方がまず大成されたという関係は、この後の契機から説明されねばならぬ。――だが科学的認識の発達が、つねに、対象手近かな吾々にとっての[#「吾々にとっての」に傍点]姿から、対象のそれ自身に於ての[#「それ自身に於ての」に傍点]姿にまで、溯及する本質をも持っているということを、忘れてはならぬ。
[#ここで字下げ終わり]
さてまず初めに、自然弁証法に就いて簡単に述べよう*。
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
* 自然弁証法に関する典拠は、エンゲルス『自然弁証法』・『反デューリング論』、レーニン『唯物論と経験批判論』(何れも岩波文庫版訳)であるが、一般の唯物弁証法の教程の一部としてあるものは別にして、独立のテキストは、史的唯物論のものに較べれば殆んど無いに近いとさえ云っていい。ゴルンシュタイン『弁証法的自然科学概論』、岡・吉田・石原『自然弁証法』(『唯物論全書』の内)などが相当纏った参考書である。――なおマクシーモフ『レーニンと自然科学』(桝本訳)やデボーリン『弁証法と自然科学』(笹川訳)を参照。
[#ここで字下げ終わり]
エンゲルスの自然弁証法は、その根本的な対立にも拘らず、ヘーゲルの自然哲学[#「自然哲学」に傍点]と決して無関係ではない。そして
前へ
次へ
全81ページ中69ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング