j的な時間[#「歴史的な時間」に傍点]に相応した系列的な連絡が想定される場合には、材料が示す事象の時間的変動は、この統計解析によって、いくつかの基本的[#「基本的」に傍点]変動形態に分解され、夫々の変動形態が独立に取り出される*。統計解析は更にこの独立に取り出された一定の変動形態を、より単純な相互に独立な最後の要素的[#「要素的」に傍点]変動形態の合成として分解したり(フリエの調和解析)、又二種以上の異った材料の夫々の変動形態の相互間に、各種の相関関係[#「相関関係」に傍点]を見出すことも出来る**。――こうして統計的操作は、科学研究のための材料を収集し提供する処の一つの[#「一つの」に傍点]手段なのである。
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* 例えば偶然変動・長期変動・季節的変動・周期的変動=狭義のコンユンクテゥール(景気変動)などに分解される。
** 統計解析に就いては小倉金之助「数理統計」(改造社版『統計学』上)を見よ。
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 社会科学に於ける統計的操作の役割に就いては、改めて説明するまでもあるまい。この操作を用いないでは社会科学的方法は殆んど全くその材料を獲得することが出来ない。問題は自然科学に於て夫がどれだけの役割を有つかである。併し、自然科学に於ても統計的なるもの[#「統計的なるもの」に傍点]は至る処に見出される。例えばメンデルによる雑種植物の変種に関する統計的操作であるとか、マクスウェルやボルツマンの古典的統計操作であるとか、ハイゼンベルクの不確定性原理によって、核外自由エレクトロンが各瞬間に於て空間上に占める定位を厳密に観察することが原則上不可能であることから、一定時一定場所に於けるエレクトロンの存在がプロバビリティー[#「プロバビリティー」に傍点]に他ならないということとか、それからエントロピーの増加率が統計的な蓋然性しか持たないとか、という現象が夫である。
 だが問題は、こうした統計的操作や、又こうした確率現象に対して必要な統計的取り扱いが、どれだけ自然科学的研究様式[#「研究様式」に傍点]の内容として重大な役割を演じているか、ということだ。大量観察という統計的操作の第一規定も、右に挙げた例のような場合には、社会科学に於ける本来の大量観察とはその性質を異にしている(前を見よ)。それに、プロバビリティーが現われる
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