[#「出来るだけ」に傍点]正確に認識し得るというに過ぎない。それ故物理学のかかる世界形像はなる程実際上には何の危険も含まないという点では許され得るにしても終局的な充分な見方とは云われない。観察に基く全経験認識の論理的基礎を厳密に論ずる場合はそれ故常にかの「全体的世界形像」の考えに還らねばならぬであろう。さてヘルムホルツの如く Gleichkeit と physische Gleichwertigkeit と解してのみ吾々の経験認識に対してその意味を見出し得ると主張する自然科学的空間説は空間表象の心理的性質を忘れた点にその誤謬の源があると思われる。実在する対象の合同を云々する時物理的な合同の外に尚何物かが考えられていると云うにしてもヘルムホルツによればそれは「認識し得るもの」に就いては何の変りもないと謂うのであるが、併しこのことは合同の概念に物理的合同以外のある他の意味があるということを否定することにはならぬであろう。自然科学的空間説を困難ならしめるものは空間表象[#「空間表象」に傍点]が何等固定した完結した者を意味しないという事実である。それ故観察すべき出来事を理解するには吾々は実在界
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