由な創造の想像力によって広範な世界に住し既知のものから前人未発の真を見出して科学の研究に新しい刺戟を与える底の思想家であったということにあると思う。

   二 カントの数学の説

 カントの最も一般的な思想の一つは吾々の精神生活の内に這入る凡てのものは吾々の意識[#「吾々の意識」に傍点]の内に与えられねばならぬということである。「主観性」とは之である。然るに吾々の意識の見渡し得ない程の多様の内吾々の知覚の或る特殊のものは常に不変であり、経験の或る特徴は必然性と厳密な一般性とを持っている。さて感性知覚の空間的な形式は之に属するものであり、カントはまずかかる意味に於て空間はアプリオリな必然的表象である[#「空間はアプリオリな必然的表象である」に傍点]という。吾々はかかるアプリオリをアプリオリの概念の心理発生的解釈[#「アプリオリの概念の心理発生的解釈」に傍点]と呼ぶ。併しこのアプリオリテートを個々の対象が互いに順序づけられて現われる方即ち視覚の optische Lokalisation と考えるならばヘルムホルツがカントを攻撃したようにかかるアプリオリテートは明らかに否定されねばならぬ
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