「仮の合目的性」と呼び得るであろう。即ち有機的な組織は常にある一定の結果を現実するように出来ていて一定の目的のために組み立てられてある「かの如く」見えるということである。この仮の合目的性を如何にして説明し得るかは生物学の研究する処であるが併し之は一般的な自然科学的な研究の範囲の外にある者である。何となれば之は因果的合法則性に於てのみ説明されるものに外ならぬのであるから。この生物学的合目的性はなる程活力説を促すではあろうが併し因果的な考察に対して目的論的考察を対立せしめる理由は持たぬであろう。之に反して以上のように他の概念に帰する見方を全く離れて自立的な終局的な意味がこの目的概念に求められるかどうかを見る時吾々は全く別の事柄に逢着する。かくの如く目的概念に独立の意味を許す考え方は往々行なわれる処であり、それは因果的な見方と目的論的な見方とを対立せしめ、更に次の如く云って両者を結び付ける。即ち吾々は継起の過程をば任意に前へも後へも辿れるのであって後の出来事が前の出来事に依存すると見るのが因果的な見方であり之に反して前の出来事を現在の即ち後の出来事に依存すると見るのが有極的な finale 
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