数の個々の場合を統一的に云い表わすと共にその表現の内容と意味とは個々の場合の個別的な関係によって決定されるものに外ならぬ。それ故関数の力を借りることによってのみ以上の困難は除かれ得る。因果律は「あらゆる時点に於て与えられたる関係とその時点に固有な変化との間には合法則的な関連がありそれがこの変化をこの関係の関数として一義的に決定する」ものとして表現されるのである。私は之を因果律の発生論理的関数的[#「発生論理的関数的」に傍点]な解釈と呼ぶ。
 因果律の発生論理的な解釈に対して作用[#「作用」に傍点]とか力[#「力」に傍点]とかいう概念によって因果律を規定しようとする考え方もあるのであるが吾々はかかる作用或は力を直接に知覚することは出来ないのであるから、もしそれがある関係を簡単に云い現わす説明法としてでないならば、それは吾々の認識の範囲を越えたものと云わねばならぬ。吾々の認識し得るものは何と云っても法則の概念による発生論理的解釈をとらせる。尤もキルヒホフなどが力学をば現象を「完全に最も簡単な形式で記載する」ものと定義して力や作用の概念を排斥したことはこの法則の概念に不当な付加物をさし入れる
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