こととなるであろう。元来「完全に」というもそれは吾々の認識能力の外に横たわることである。「簡単」というも力学は云わば直接に知り得る事実を簡単に云い表わすことをとり扱うのではなくして直接に与えられたるものを超えて一般化することであるからこの「簡単」は実は法則に帰するものでなければならぬであろう。併し因果律を以上の如く解釈してもそれは吾々の自然認識の一般的な形式を示すだけであってそれによってはまだ事実に対する因果律の意味は尽くされていない。合法則的に秩序づけられることを指し示す論理発生的解釈の外になお因果律の「本体論的」な規定が残されている。吾々はたとえ厳密な意味での法則に達しないまでも継起に就いて因果的と呼ばれるある秩序を近似値的に見出し得るであろう。俗に之をもなお法則と呼ぶならばそれは「Geschehen の法則」と呼んでよいであろう。
併しある個々の対象や出来事をある一定の結果の原因であると見る考え方は独り日常の知識のみならず科学的な認識に於ても行なわれる処である。吾々は何かある一定のものを特別の意味に於て原因として掲げる。即ち主なる[#「主なる」に傍点]原因として掲げる。そしてそ
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