Bそうしてこうした論理や科学と範疇体系の上で共軛関係にある処の他の一切の文化――芸術・道徳・宗教其他――も亦、その限り範疇体系によって初めて組織が与えられるのである。イデオロギーは単なる意識乃至意識(観念)形態ではない、論理的価値[#「論理的価値」に傍点]=歴史的価値[#「歴史的価値」に傍点]を負った夫なのである。だからこそそれは客観的な文化形態ともなることが出来るわけである。――イデオロギーの論理学なしには、何の有効なイデオロギー論もないのだが、それに必要なものがイデオロギー論的な範疇論なのである。
 イデオロギーを意識形態だとすれば、イデオロギーの心理学[#「心理学」に傍点]はかくて論理学[#「論理学」に傍点]に集約されて初めて成り立つことが出来る。社会心理と呼ばれるものや個人心理なるものは、云うまでもなく一応心理的に問題として取り上げられねばならないが、それがイデオロギーの資格を以て登場するためには、この心理学が更にイデオロギーの論理学にまで高められねばならぬ。そうしなければ意識形態[#「意識形態」に傍点]と文化形態[#「文化形態」に傍点]とは決して媒介されずに終らねばならないだ
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