フ性に対応して、具体性を有って来なければならぬ。論理は具体的な形態性を有って来なければならぬ。その形態がまず第一に範疇[#「範疇」に傍点]なのである。
 普通、範疇は根本概念[#「根本概念」に傍点]を意味する。だがその際、論理という概念が意識全般を支配する骨髄として理解されねばならなかったと同じく、概念という概念も亦、観念[#「観念」に傍点]の凡てに渡る骨髄として理解されなければならぬ。人々はよく、芸術や信仰に就いて、概念的なものを排斥せねばならぬ、というようなことを口にする。例えば芸術的感覚[#「感覚」に傍点]は概念的[#「概念的」に傍点]なるものの正反対だと考える。併し概念という言葉をそういう風に使うことは全く俗物的な習慣からに過ぎないのであって(概略の観念という如き)、概念という言葉はもっと立ち入った基本的な意味の下に用いられることを必要とする。概念とは、形式論理学による学校式な定義とは一応無関係に、ヘーゲルに従って、把握の仕方一般[#「把握の仕方一般」に傍点]を指さねばならない。芸術的感覚も亦そういう把握の仕方の一つ[#「一つ」に傍点]に外ならない。そして人々の云う所謂概念的な
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