をば、歴史の運動に取り残された意識と考えることは、一般に行われる処であるが、意味のあることだ。なぜなら之は、イデオロギーが何故虚偽意識[#「虚偽意識」に傍点]となるかということの一つの説明を与えるからである。イデオロギーとは要するに歴史的存在に追いつけない意識だから虚偽だという主張なのである(歴史的存在を追い越して了った意識は之に反してユートピア[#「ユートピア」に傍点]と考えられる)。――だが、之では真理意識[#「真理意識」に傍点]としてのイデオロギーは理解するに由がない。イデオロギーの価値的規定は単に歴史の時間的なメカニズムだけからは与えられない、社会の云わば空間的な――階段[#「階段」に傍点]による――メカニズムを用いなければならない理由が茲でも明らかだろう。
[#ここで字下げ終わり]

 単なる意識[#「意識」に傍点]は高々存在(自然・歴史的社会)の単なる[#「単なる」に傍点]反映を云い表わす概念である。イデオロギー[#「イデオロギー」に傍点]は、意識形態[#「意識形態」に傍点]は、之に反して存在の反映を具体的に叙述する[#「具体的に叙述する」に傍点]処の概念である。イデオロギ
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