ることが、全く部分的な見解でしかないということを知らない点である。イデオロギーの概念を統一的に組織的に把握するものは唯物史観の外にはないが、その唯物史観によれば、イデオロギーとは終局に於て階級イデオロギー[#「階級イデオロギー」に傍点]の外ではないのである。色々のイデオロギーがあるのではない、そしてその内の一つのものが階級[#「階級」に傍点]のイデオロギーなのではない、凡てのイデオロギーが階級イデオロギーに帰着[#「帰着」に傍点]しなければならない、と云うのである。
 階級は併し社会の全体ではない、それは社会の部分にすぎない(但し大事なことは夫が社会に於ける単なる部分ではなくて対立的な部分だということなのだが)、そうすれば階級イデオロギーは、即ち又イデオロギーは、社会全体を代表する観念ではなくてその一部分をしか代表しない観念となるだろう。一応そうである。でそうすればイデオロギーは決して社会全体に対して通用出来ないもので、夫は自分が代表する一つの階級にしか通用しない、ということになりそうである。それは階級の利害――併しそれは要するに個人主観[#「主観」に傍点]の利害である――に動機される
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