ンは人間学[#「人間学」に傍点]の歴史に於ける最も重大な結節点の一つであり、人間の内面的・内部的・条件を取り扱かうことを主眼としたが、こうした内部的人間学[#「内部的人間学」に傍点]が、その思想の連りを今云ったイデオローグから引いていたことを忘れてはならぬ。
 イデオロジーはだから云わばフランス唯物論とフランス観念論――例えば所謂モーラリスト(之はモンテーニュから始まる)の如き――との中間に位する(実はすでにデカルトに於てそうであったのであるが)。之は十八世紀のフランス唯物論を標準にして云えば、その副産物又は副作用と考えられるだろう。吾々はこれを「フランス・イデオロギー」と呼ぶことが出来る。
 併しイデオロジーは、それが問題の出発点を――従ってその到着点をも――観念(乃至意識)の研究に限定して了ったから、その解決は、当然或る意味に於て観念的とならざるを得なかったのは、自然の勢だろう。ここではもはや事物は現実的な・着実な・説明を期待することが出来なくなる。それは一歩誤れば空疎な言説・科学上の徒らな大言壮語・に堕ちて行く。ナポレオンがド・トラシを指して「イデオローグの巨頭」と呼んだことは有
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