\―そのような生物学的・本能的・衝動――でなければならない、そうパレートは考える。このニーチェ的な世界観乃至人間学はであるから、結局、歴史の原理的な支配を徹底的に拒絶することを意味し、従ってその限り、シェーラーと可なり近いものを示しているかのようである*。ただシェーラーに於ては一方歴史[#「歴史」に傍点]は、永劫の回帰としてすら問題となることが出来ず、又他方、生物学的[#「生物学的」に傍点]・本能的[#「本能的」に傍点]な諸力も、結局精神的[#「精神的」に傍点]な諸力によって統制されているという点にだけ、両者の間の相違が在るというに過ぎないように見える(第四章を見よ)。
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* 歴史的原理の否定は、取りも直さず、歴史的必然性の何等かの意味での否定である。そこでは歴史的必然性を攪き乱すものとしての偉人――偉人は必ずしも歴史的必然性の攪拌者であるとは限らないのだが――に歴史的自由が許される。ニーチェの超人はかくて山を下りローマの街へ進軍する。パレートの知識社会学がファシズムのイデオロギーへ一貫していることは、注意すべきだ。パレートの弟子ムッソリーニは、晩年のパレートをその腹心の一人に数えたのである。
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 だがパレートの知識社会学にあっては、歴史的原理の代りに少くとも或る意味での実践的原理[#「実践的原理」に傍点]が支配している、ということは見逃してはならない。元来、歴史的原理が充分に歴史的原理としての資格を保つためには、それが同時に充分な資格に於て実践的原理でもなければならない、歴史的原理と実践的原理とは本来離れてはあり得ない――後を見よ。処で今茲で、歴史的原理の代りに実践的な原理が、従ってまだ充分な資格に於てではないが兎に角或る意味での[#「或る意味での」に傍点]実践的原理が、注目されている、というのである。何故なら、彼の社会学は一般に(Michels 等によれば)[#傍点]非論理的な行動の自然史[#傍点終わり]だと考えられることが出来るのであるが、この非論理的な行動の構造を特に取り出して分析するならば、それが取りも直さず彼の知識社会学――イデオロギー論――となるのだからである。パレートの知識社会学が或る意味に於て――但し行動を問題とするという意味に於てのみ――ともかく実践的原理を有つ所以である。之は無論シェーラーなどには欠けている一つの原理であった。
 恰も前に、知識の歴史的[#「歴史的」に傍点]規定が限定されて行けば行く程、同時に知識の論理的[#「論理的」に傍点]規定が愈々限定されて行く、と云ったことに相応して、今、知識の実践的[#「実践的」に傍点]規定が同時に知識の論理的[#「論理的」に傍点]規定を意味するだろうことは、そうありそうなことである。実際、その関係は彼に於て、次のような形で現われる。
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(A)を人間の内部的な心理状態[#「心理状態」に傍点]とする、之は歴史の一切の変化を通じて不変な人間固有の常数である。之は云うまでもなく論理的ではない処の、非論理的な残留物[#「非論理的な残留物」に傍点]である。
(B)は(A)に基く処の、外部的な行動の過程[#「行動の過程」に傍点]であるとする。
(C)をそして、かかる(B)の、言葉=論理による是認[#「是認」に傍点]・理由づけ[#「理由づけ」に傍点]・権利づけ[#「権利づけ」に傍点]であるとしよう。
[#ここで字下げ終わり]
 そうすれば、前の所謂、非論理的行動[#「非論理的行動」に傍点]は必ずA→B→C(又は結局同じことに帰着するがA→C)という構造を、それの単位とするものである。と云うのは、人々は先ず第一に一定の意識(A)を持つことによって、第二に之に基いて行為し(B)、自己のこの行為を第三に合理化・正当化す(C)、という順序によって、その行動[#「行動」に傍点]――之が非論理的なのである――を終結することが出来る*。さてこの(C)が恰もイデオロギーに相当する処のものである、蓋し(C)は(B)乃至(A)の云わば上層建築に相当するのであるから。社会生活に於てはたとい絶対的なもの・真なるものと考えられるものでも、実は常に、様々な知識内容をば情意に基いた或る一つの連関にまで結合する処の、人間の本能の結果の外ではない。それはこの意識内容に対して、単に後から遅れ走せに、合理的な整合と正当性との外観を与えるための、導来物・合理的被覆でしかない、と考えられる。之がイデオロギーに相当する理由であった**。で、そうすれば茲では、真理の外観[#「真理の外観」に傍点]を有つ処の、併し必ずしも真理ではないもの[#「真理ではないもの」に傍点]としての、観念体系=イデオロギーが問題になっている。之は単に特殊な立場に
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