「限界」に傍点]を持つものとしてまずあり、そして窮極に於ては原子[#「原子」に傍点]としてある。
 性格[#「性格」に傍点]の概念は然るに、個別化原理とは独立な成立を有っている処にその特色を示している。今それを明らかにしよう。
 二つの事物の限界[#「限界」に傍点]が与えられない時に於ても、二つの事物の性格は夫々明らかであることが出来る。植物と動物との限界は決して正確に与えられ得ないにも拘らず、即ち両者を区別するに充分な徴標が見出し難いにも拘らず、それを理由にして動物と植物との夫々の特色が不明であると云うならば、それは少なくとも常識の忠実な告白ではないであろう。吾々は事実、両者の性格を夫々――常識的に*――知っており、又その限り両者の区別を、云うならば概略に於て[#「概略に於て」に傍点]知っているのであって、日常生活にとってはこの概略さで充分であり、又この概略さに止まらなければ日常生活は支えられないであろう。ただこのように概略に於て性格を理解することによっては、動物と植物との限界が少しも与えられないというまでである(実は与えられる必要がないのである)。動物と植物との関係に於てはそれにし
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